中小企業のハラスメント対策とは?義務化された4つの措置と進め方を解説

竹内パートナーズ社労士事務所15分で読めます
ハラスメント対策 中小企業

職場でのハラスメント対応に、どこから手をつければよいか迷っていませんか。2022年4月からは中小企業にもパワハラ防止措置が義務づけられ、企業規模を問わず全ての事業主が対象になりました。対応の遅れは、従業員の離職や行政からの指導につながる場合があります。一方で、方針の明確化・相談窓口の設置・就業規則への明文化という基本を押さえれば、人員の限られた中小企業でも無理なく体制を整えられます。早めの準備が、結果として会社を守ることにつながるのです。

1. ハラスメント対策とは?中小企業が押さえる基礎知識

ハラスメント対策 中小企業

1.1 職場で起こる主なハラスメントの種類と定義

職場のハラスメントは複数の類型に分かれ、それぞれ法律上の定義が異なります。中小企業がまず押さえるべき代表的な4類型は、次のとおりです。

  • パワーハラスメント

  • セクシュアルハラスメント

  • カスタマーハラスメント

  • 妊娠・出産等に関するハラスメント

  • 育児休業・介護休業等に関するハラスメント

パワーハラスメントは、優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要な範囲を超え、就業環境を害するものを指します。セクシュアルハラスメントは、性的な言動によって不利益や就業環境の悪化を生じさせる行為です。妊娠・出産や育児・介護休業に関するハラスメントは、制度の利用や本人の状態を理由とした嫌がらせを指します。

職場の実態として、SNS上では次のような声も見られます。

SNSの声

「世の中多くの組織では、こんな風に「一瞬で主従関係を刷り込む『いてこます』方式」でないとマネジメントできないことが多くて」

出典: X(@nittaryo)

自社で起きやすい類型を把握することが、対策の出発点になります。

類型ごとに禁止すべき言動が変わるため、自社の業務や職場構成に照らして整理しておくと、後の就業規則づくりがスムーズに進みます。

1.2 2026年10月から中小企業にもカスハラ対策が義務化

2026年10月1日から、改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメント(カスハラ)の防止措置が事業主に義務づけられました。企業規模による区別はなく、中小企業も対象となります。

カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先などの言動が社会通念上許容される範囲を超え、従業員の就業環境を害するものを指します。暴言や威圧的な言動、不当な要求などが該当する場合があり、接客業だけでなく幅広い業種で対策が必要です。

事業主には、主に次のような対応が求められています。

  • カスタマーハラスメントに対する会社の方針の明確化と従業員への周知

  • 相談窓口の設置と適切に対応できる体制の整備

  • 被害が発生した際の迅速な事実確認と従業員への配慮

  • 再発防止策の実施や相談者のプライバシー保護

中小企業においても、顧客対応を従業員個人に任せきりにせず、組織として従業員を守る仕組みを整えることが重要です。

なお、職場内のパワーハラスメントについては、2022年4月から中小企業にも防止措置が義務化されています。今回の法改正を機に、既存のハラスメント対策とあわせて、就業規則や相談体制を見直すことが求められます。

1.3 ハラスメント対策が義務づけられる行為の範囲

防止措置が義務づけられる対象は、パワハラだけにとどまりません。法律上は複数のハラスメントが対象として整理されています。

  • 職場におけるパワーハラスメント

  • 職場におけるセクシュアルハラスメント

  • 妊娠・出産等に関するハラスメント

  • 育児休業・介護休業等に関するハラスメント

  • カスタマーハラスメント

これら5つの分野について、事業主はそれぞれの法律に基づき、必要な防止措置を講じなければなりません。パワハラ防止法で注目が集まりがちですが、セクハラやマタハラへの対応も以前から求められてきたものです。

さらに、2026年10月1日からはカスタマーハラスメントについても防止措置が義務化されました。顧客や取引先などからの著しい迷惑行為に対しても、会社の方針の明確化や相談体制の整備、被害を受けた従業員への適切な対応が求められます。

中小企業では、これらの分野を一体的に捉え、まとめて体制を整えるのが現実的です。

分野ごとに別々の規程や窓口を用意すると運用が煩雑になりがちです。中小企業では、相談窓口や社内規程を共通化しながら、それぞれのハラスメントに必要な対応を整理することで、運用負担を抑えられます。

2. なぜ中小企業にハラスメント対策が必要なのか?

ハラスメント対策 中小企業

2.1 ハラスメント対策を怠った場合に企業が負うリスク

ハラスメント対策を怠ると、行政対応から訴訟リスクまで複数の負担が生じる場合があります。法律では、事業主が措置義務を果たしていない場合に、段階的な行政対応が想定されています。

  • 都道府県労働局による助言・指導

  • 必要に応じた是正の勧告

  • 勧告に従わない場合の企業名公表の可能性

これらは段階を踏んで行われ、いきなり公表に至るものではありません。ただし、対応を放置すれば企業名公表につながる可能性は否定できません。

行政対応だけでなく、損害賠償請求に発展するケースもあります。

被害を受けた従業員が民事上の責任を会社に求める場合もあり、金銭的な負担にとどまらず社会的な信用の低下にもつながりかねません。目先の手間を避けた結果、より大きな代償を負うことは避けたいところです。

2.2 ハラスメントが職場と従業員に与える影響

ハラスメントの影響は、被害を受けた個人だけでなく職場全体に広がる傾向があります。当事者の心身の不調や休職、離職につながる場合があるほか、周囲の従業員の意欲低下も見られます。

人員に余裕のない中小企業では、1人の離職が業務全体に与える影響は大きくなりがちです。採用や引き継ぎにかかるコストを考えると、予防に投じる労力の方が小さく済むことも少なくありません。

職場の雰囲気が悪化すれば、生産性や定着率、さらには採用活動にも影を落とすことがあります。求職者が職場環境を重視する傾向もあり、対策の有無が人材確保を左右する場面も増えているのです。こうした影響は数字に表れにくいからこそ、早めの手当てが欠かせません。

3. 事業主に求められるハラスメント対策の4つの措置

ハラスメント対策 中小企業

3.1 ハラスメント対策の方針の明確化と社内周知

事業主が最初に取り組むべきは、ハラスメントを許さないという方針を明確にし、全従業員へ周知することです。方針を示すだけでなく、行為者への対処方針まで併せて定める必要があります。

  • ハラスメントの内容と「行ってはならない」旨の方針の明確化

  • 行為者への厳正な対処方針とその内容の規定化

  • これらを就業規則や社内文書で全従業員へ周知・啓発

方針が文書化されていないと、問題が起きた際に対応の根拠を示せません。口頭で伝えるだけでは、周知したことの証明も難しくなります。

方針は就業規則など書面に落とし込み、全員が確認できる状態にすることが求められます。

朝礼や社内メール、掲示など、自社で実行しやすい方法で繰り返し伝えると定着しやすくなります。

3.2 相談に応じる体制の整備

事業主には、相談に応じ適切に対応するための窓口をあらかじめ定め、労働者へ周知する義務があります。問題が起きてから慌てて窓口を探すのでは、初動が遅れてしまいます。

窓口は、担当者を決めておくだけでなく、相談を受けた後の対応の流れまで整えておくことが求められます。誰が、どのように一次対応し、どこへつなぐのかを決めておくと、相談者も安心して声を上げられます。

重要なのは、窓口の存在が従業員にきちんと伝わっていることです。設置しても知られていなければ利用されず、結果として相談が表面化しないまま問題が深刻化しかねません。相談先が明確であること自体が、未然防止につながるのです。

3.3 相談後の事実確認と迅速な対応

相談を受けた後は、事実確認から再発防止まで一連の流れを迅速かつ適切に進める必要があります。対応の順序を決めておくと、感情的な判断を避けられます。

  1. 事実関係の確認:相談者と行為者、必要に応じて第三者から迅速かつ正確に事実を確認する

  2. 被害者への配慮:被害を受けた従業員に対し、適正な配慮の措置を講じる

  3. 行為者への措置:事実に基づき、行為者に対して適正な措置を講じる

  4. 再発防止:同様の事案を繰り返さないための措置を実施する

これらは事実確認を起点に、被害者配慮と行為者対応を並行して進めるのが基本です。一方だけに偏ると、公平性を欠いた対応と受け取られかねません。

事実確認を省いて結論を急ぐことが、対応を失敗させる最大の原因になりがちです。

確認の記録を残しておくと、後から対応の妥当性を説明する際にも役立ちます。

3.4 プライバシー保護と不利益取扱いの禁止

相談対応では、当事者のプライバシー保護と、相談を理由とする不利益取扱いの禁止を徹底しなければなりません。この2点が守られなければ、従業員は安心して相談できないのです。

相談内容や当事者の情報が社内に漏れれば、相談をためらう空気が広がります。知り得た情報の取り扱いルールを定め、担当者に周知しておくことが欠かせません。

また、相談したこと自体を理由に、解雇や降格、不利益な配置転換などを行ってはならないと定められています。この点を就業規則に明記し、従業員へ伝えておくことが大切です。相談が報復につながらないと分かって初めて、現場の声が経営に届くようになります。

4. 中小企業におけるハラスメント対策の進め方と手順

4.1 ハラスメント対策を始めるための準備ステップ

ハラスメント対策は、方針決定から研修まで順序立てて進めると着手しやすくなります。何から手をつけるか迷う場合は、次の流れを目安にしてください。

  1. 方針の決定:会社としてハラスメントを許さない方針を固める

  2. 就業規則の整備:禁止事項や懲戒、不利益取扱いの禁止を規則へ盛り込む

  3. 相談窓口の設置:担当者を決め、受付から対応までの流れを整える

  4. 全従業員への周知:方針と窓口を書面や説明会で伝える

  5. 研修の実施:管理職を中心に、具体的な言動の線引きを共有する

この順序であれば、方針という土台の上に規則・窓口・周知が積み上がり、抜け漏れを防げます。

まず方針と就業規則という土台を固めてから、窓口や研修に進むのが効率的です。

一度に完璧を目指すより、できるところから着手し、運用しながら見直す進め方が現実的でしょう。

4.2 ハラスメント対策を就業規則へ明文化する方法

ハラスメント対策を実効性のあるものにするには、就業規則への明文化が欠かせません。方針を掲げるだけでなく、違反時の扱いまで定めて初めて、対応の根拠になります。

就業規則には、禁止するハラスメント行為の内容、違反した場合の懲戒の定め、相談を理由とした不利益取扱いを禁止する旨を盛り込みます。これらが規定されていれば、問題発生時に懲戒や配置転換の判断を一貫した基準で行えます。

既存の就業規則がある場合は、ハラスメント関連の条文が現行法の内容を満たしているか確認するところから始めるとよいでしょう。古い雛形のままだと、義務化された措置をカバーしきれていないことがあります。自社だけで判断が難しい場合は、専門家の確認を受ける方法もあります。

4.3 相談窓口の設置と担当者の決め方

相談窓口は、社内と社外のどちらか、あるいは両方を組み合わせて設置できます。会社の規模や事情に合わせて選ぶことが現実的です。

  • 社内窓口:人事担当者などが兼任する形で設置できる

  • 社外窓口:社労士事務所や専門機関へ委託する方法がある

  • 担当者の配置:相談を受ける担当者と、対応を統括する責任者を分けて置く

中小企業では専任者を置きにくいため、既存の担当者が兼任するケースも多く見られます。社外窓口や専門家への委託も選択肢で、社労士事務所などの専門機関に委託する方法もあります。

社内の相談しやすさと、社外の中立性のどちらを重視するかが選択の分かれ目になります。

一方に決めきれない場合は、社内窓口を基本としつつ社外も併用し、相談者が選べる形にする方法もあります。

5. 竹内パートナーズ社労士事務所のハラスメント対策支援

5.1 中小企業の労務の悩みに対応できるサポートの範囲

専任の労務担当者を置きにくい中小企業では、ハラスメント対策まで手が回らないという悩みを抱えがちです。就業規則の見直しや相談体制の整備を、本業の合間に進めるのは簡単ではありません。

竹内パートナーズ社労士事務所は、就業規則の整備や労務コンサルティングの一環として、こうした体制づくりを支援しています。方針の文書化から相談窓口の設計まで、どこから着手すべきか整理するところを一緒に進められます。

社会保険手続きや給与計算など、日々の労務全般に対応している点も特徴です。ハラスメント対策を単独の課題として切り離すのではなく、労務管理全体の中で位置づけられるため、無理なく運用を続けやすくなります。詳しいサポート範囲は竹内パートナーズ社労士事務所で確認できます。

5.2 ハラスメント対策に生かせる就業規則整備の支援

ハラスメント対策の要となる就業規則の整備では、代表者の経歴に基づく視点が生かされています。労務と経営の両面から規則を見直せる点が、同事務所の支援の特徴です。

  • 社労士としての専門性:法律に沿った就業規則づくりと労務相談への対応

  • 9年間の金融機関での法人営業経験:経営や資金面を踏まえた助言

  • 助成金申請の実績:利用可能な制度を確認しながら労務環境の整備を支援

ハラスメント対策では、就業規則の整備や雇用環境の見直しなど、企業ごとの状況に応じた対応が必要です。

竹内パートナーズ社労士事務所では、労務管理と経営の両面を踏まえながら、企業の状況に応じた就業規則の整備や体制づくりを支援しています。

5.3 顧問契約とスポット対応に関する補足

竹内パートナーズ社労士事務所では、継続的な顧問契約だけでなく、スポットでの相談にも対応しています。

「就業規則を見直したい」「ハラスメント相談窓口の設置について相談したい」など、特定の課題について相談することも可能です。

継続的な顧問契約に限らず、企業が抱えている課題や必要な支援内容に応じて相談できます。

6. 中小企業のハラスメント対策に関するよくある質問

ハラスメント対策を進めるなかで、中小企業の経営者や担当者からよく寄せられる疑問を整理しました。本文で触れた要点を、判断や行動に移しやすい形で改めて確認していきます。

6.1 中小企業にもハラスメント対策の義務はあるのですか?

結論として、中小企業にもハラスメント対策の義務があります。企業規模にかかわらず、全ての事業主が防止措置を講じる対象です。

  • 大企業は2020年6月1日から義務化

  • 中小企業は2022年4月1日から義務化

かつて中小企業は努力義務にとどまっていましたが、現在は猶予期間が終わっています。従業員数の多少は関係なく、少人数の会社でも例外ではありません。未着手であれば、まず自社の現状を確認することから始めるとよいでしょう。

6.2 ハラスメント対策を怠るとどのようなリスクがありますか?

対策を怠ると、行政からの助言・指導・勧告を受け、勧告に従わない場合は企業名が公表される可能性があります。後悔しないために押さえておきたいのは、リスクが行政対応だけにとどまらない点です。

従業員の離職や意欲低下、損害賠償請求、採用への悪影響など、経営を揺るがす負担につながる場合があります。人員に余裕のない中小企業ほど、1件の問題が全体へ波及しやすい傾向があります。手間を惜しんで放置するより、早めに体制を整える方が負担は小さく済みます。

6.3 ハラスメントの相談窓口は社内と社外のどちらがよいですか?

どちらが優れているとは一概には言えず、自社が何を重視するかで判断するのが現実的です。選ぶ際の軸は、相談のしやすさと中立性、そして運用できる人員の有無です。

社内窓口は相談への距離が近く、状況を把握しやすい一方、人間関係が影響して相談しにくい場合もあります。社外窓口は中立性を保ちやすく、専任者を置けない会社でも運用しやすい反面、社内事情の共有に工夫が要ります。両方を併用し、相談者が選べる形にする方法も検討する価値があります。

7. まとめ:中小企業のハラスメント対策は早めの体制づくりから

中小企業のハラスメント対策は、2022年4月のパワハラ防止措置の義務化に加え、2026年10月からカスタマーハラスメント対策も義務化され、企業に求められる対応が広がっています。方針の明確化と周知、相談体制の整備、事後の迅速な対応、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止などを押さえ、就業規則の見直しや相談窓口の整備を進めることが重要です。

対応を先送りにすれば、行政からの指導や従業員の離職といった負担につながりかねません。一方で、土台となる方針と就業規則から着手し、できる範囲で運用しながら見直していけば、人員の限られた会社でも無理なく体制を整えられます。

まずは自社の現状を確認し、不足している部分から手をつけてみてください。自社だけで判断が難しいと感じたら、就業規則の整備や相談体制づくりを支援する社労士事務所に、早めに相談することをおすすめします。

中小企業のハラスメント対策は竹内パートナーズ社労士事務所へご相談を

竹内パートナーズ社労士事務所は、就業規則の整備や労務コンサルティングを通じて、中小企業のハラスメント対策の体制づくりを支援します。顧問契約のほかスポット対応にも応じているため、まずは今ある課題の整理からご相談いただけます。

就業規則の見直しや相談窓口の設け方だけでも、無理のない範囲でお気軽にお問い合わせください。

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